文章を書くとき「ここは漢字で書いた方がいいのかな?」「ひらがなの方が読みやすいかな?」と迷うことってありませんか?
この記事では、漢字を開く・閉じるのルールとメリット、デメリットをわかりやすく解説します。さらに、便利な一覧表付きなので、迷った時にサッと確認できますよ。
現役校正者が見た、間違えがちな開く漢字ルールの事例付き。
読みやすい文章を書くための漢字の閉じ開きをマスターして、あなたの文章をレベルアップさせましょう!
看護師ライター歴7年・校正校閲歴2年半。Webライターと並行して行っている校正では、電子書籍70冊以上・個人ブログ200記事以上の実績あり。人の文章を多くみてきた視点で開く漢字・閉じる漢字について語ります。
漢字の閉じる・開く一覧表がすぐにみたい方は【こちら】をクリックして確認してください。
\ 漢字を閉じる・開くもチェックできる/
漢字を開くのは読みやすさのため
「漢字を開く」とは編集用語・校正用語で「漢字でかける語句をひらがな表記にして表現すること」です。
反対に漢字を閉じるとは、ひらがな表記されている語句を漢字にすることをいいます。
漢字はまとめて意味を伝えられる便利な表現方法ですが、多用すると文章が固く読みにくくなることも。そこで、読みやすさを向上させるために有効なのが「漢字を開く」というテクニックなのです。
漢字を開く・閉じるのルール
常用漢字にない漢字
常用漢字に無い漢字は基本的に開きます。常用漢字表に無く、開いた方がいい感じは以下の通りです。
漢字 | 開いた状態 |
---|---|
上手く | うまく |
何れ | いずれ |
徒に | いたずらに |
一昨日 | おととい |
覚束ない | おぼつかない |
様々 | さまざま |
晒す | さらす |
目論む | もくろむ |
全く | まったく |
瞬く | まばたく |
疎ら | まばら |
ただし、常用漢字にあっても、漢字の使いかたに迷う時は開いてもOK。
見る・観る・視る など
どれが常用漢字かわらないよ!って方は無料の常用漢字チェックツールがあります。
補助動詞
補助動詞は「動詞」でありながら実質的な意味を失っていて、ある語句にそえて補助的意味を持つ語句のことです。
漢字表記 | 漢字を開いた状態 | 例文 |
---|---|---|
~する事 | ~すること | |
~と言う | ~という | |
~できる事 | ~できること | |
~下さい | ~ください | こちらにおかけください |
~頂く | ~いただく | |
~致します | ~いたします | |
~見る | ~みる | 行ってみる |
~有る | ~ある | 置いてある |
複合助詞
複合助詞は複数の「助詞」が連なってできた語句で、原則として開きます。
「が」「を」「に」「へ」「と」「から」「より」「まで」「で」
このうち、開く表現をするのは「迄(まで)」です。
漢字を閉じた状態 | 漢字を開いた状態 | 例文 |
---|---|---|
~迄 | ~まで | 11時までにつくように家を出る。 |
接続詞
文と文・文節と文節・語句と語句をつなぐ役割があるのが接続詞ですが、基本的に漢字は開いて表記します。
漢字を閉じた状態 | 漢字を開いた状態 |
---|---|
故に | ゆえに |
然し | しかし |
然るに | しかるに |
尚 | なお |
且つ | かつ |
但し | ただし |
及び | および |
並びに | ならびに |
或いは | あるいは |
若しくは | もしくは |
又 | また |
副詞
品詞の一つであり、おもに連用修飾語として用いられる語句。連用修飾語とは、他の語句に連なり、意味を詳しく説明する語句のことです。
漢字を閉じた状態 | 漢字を開いた状態 | 例文 |
---|---|---|
極めて | きわめて | |
一体 | いったい | |
一層 | いっそう | |
大層 | たいそう | |
勿論 | もちろん | |
是非 | ぜひ | |
決して | けっして | |
暫く | しばらく | |
例え | たとえ | たとえ叶わなくても |
多分 | たぶん | 多分泣かない |
滅多に | めったに | めったにお目にかかれない |
何故 | なぜ | なぜ彼女は笑わないのか |
開くべき漢字をすぐ引けるのはこちら
漢字を開く・閉じるのメリットとデメリットは?
漢字の「開く・閉じる」は、文章の印象や読みやすさに大きく影響します。それぞれのメリットとデメリットを理解し、状況に応じて使い分けることが重要です。
【漢字を開く】ことのメリット・デメリット
漢字を開いてひらがなで表すことのメリット・デメリットは以下の通り。
メリット | デメリット |
---|---|
親しみやすさが出る リズム感が出る | 読みやすくなる幼稚な印象が出る 意味があいまいになる | 読みにくくなる場合がある
漢字を開く最大のメリットは、難しい漢字を開くことで、読みやすく理解しやすい文章にすること。
文章の漢字使用率の理想は2割、新聞などでは3割といわれています。
漢字を開いてひらがな表記にすれば、堅苦しさも消えるため、文章に親しみも増しますね。適度に漢字を開くことは、ブログやSNSの文章に必要です。
反対に漢字を開くデメリットは、開きすぎると一瞬では意味がわからず、読みにくくなること。
ひらがなが多い文章は子ども向け文章のような幼稚なイメージができるため、ビジネスやフォーマルな文書には不向きです。
漢字を閉じるメリット・デメリット
漢字を閉じるメリット・デメリットは以下の通り。
メリット | デメリット |
---|---|
ビジネスなど公式の文書に適している | 読みやすくなるページ全体が黒っぽい見た目になる | 堅苦しくなる
漢字でパッと見て意味が理解しやすい文言は、スムーズに内容が理解できるため、読みやすくなること。
また、大人が使用する文言を漢字率を意識して記すと、ビジネスや公文書などで使用できます。
反対に漢字が多くなると堅苦しくなるものです。
医療記事や法律系の記事など、専門用語が多い文章のライティングでは、開けない漢字も多いので、多少漢字率が高くてもいいよ、とクライアントさんからいわれるケースもあります。
私たちWebライターの間では、漢字が多すぎる文章を「ページが黒い」と言います。
黒すぎるページは、見た目も意識していないため残念な文章……
見た目をよくするためにも、黒いページ(漢字率が高いページ)は作らないようにしたいものです。
漢字を開く・閉じる時の判断基準
漢字を開くとき・閉じるときに明確なルールはありませんが、以下の2つのポイントを意識することで、状況に合った適切な判断ができます。
文章の目的
文章の目的とは「誰に何を届ける文章なのか」です。文章の目的や読者ターゲット層によって書き方は違ってきます。
ターゲット | 目的 | 漢字の閉じ・開きの考え方 |
---|---|---|
電化製品の購入者 | 説明書 | 漢字はむやみに開かず、堅い文章でよい |
医療記事 | 医療従事者向けコラム | 漢字は開きすぎない(専門用語が多く開けない) |
Xのつぶやき | 読者 | 漢字は適度に開き、親しみやすい文章にする |
個人の雑記ブログ | 読者 | 漢字は適度に開き、簡単に読めそうだと思ってもらう |
親もしくはこども | 子ども向け絵本 | 対象年齢が読みやすいよう、漢字を開く |
たとえば法律系のサイトの記事で「漢字を開いた口語が多く、話しかけるような文章」だったら内容を信頼できるのかな?と思ってしまいます。
反対に、気軽に読みたいSNSで漢字が多くお堅い文章だったら……
ファンは増えないかもしれませんね。
見た目
文章のライティングは、内容だけでなく見た目を意識することも重要です。
たとえば漢字使用率が4割などと高い場合は、先述したようにページ全体の見た目が黒く見え、Webライターの間では「お経」といわれてしまいます。
人に読んでもらう記事なのに、ページを黒くしすぎるのは残念。
反対に、漢字を開きすぎるとページが白っぽい、スカスカしたような印象を与えます。どれほど論理的な内容を書いても幼稚な内容なのかな? とも思われるのです。
メディアのルール
Webライターが仕事を受注して書いている場合、クライアントさんが運営するメディアのルールに従います。組織によってレギュレーションが異なる場合があるからです。
メディアによって大幅に漢字の開きルールが異なるようなことはないのですが、念のため確認したほうがよいでしょう。
電子書籍など自分のメディアでは、自分で漢字の開閉ルールをもうけてもOK。
漢字の開閉で、読者の読むスピードをコントロールできます。
リズムをつけて読者が読むスピードを速めたいときは漢字を閉じ、ゆっくり読ませたいときは漢字を開いてひらがなを多くします。
開く漢字・閉じる漢字をチェックする方法は?
漢字の開閉にルールがあるのはわかったけど、多すぎて忘れてしまう……って方はツールをつかってチェックするのが便利です。以下に紹介しますね。
無料ツールを使う
無料の漢字開閉チェックツールを紹介します。
にゃん分待ってやる( クリックで該当ページに飛びます)
指定の枠内に漢字の開閉を確認したい語句を入れると、下の枠に「漢字を開くべき箇所は開いた回答」が出てきます。反応が早く、使いやすい。
漢字の閉じ開きなど機能とは無関係ですが、個人的にトップページの猫のイラストに癒されます。
開く漢字チェッカー ( クリックで該当ページに飛びます)
指定の枠内に漢字の開閉をチェックしたい語句を入れると、漢字含有率と開く漢字かどうか同時にチェックできます。シンプルな作りで漢字の閉じ開きチェックなど機能に特化していますが「にゃん分待ってやる」よりもややスピードが遅い印象。(個人の感想です)
有料校正ツール文賢を使う
有料で漢字の開閉がわかるツールの一押しは、文賢です。
文賢は100以上ある視点で文章の誤字脱字、漢字の閉じ開きなどの指摘などをしてくれる、AIによる文章校正支援ツール。
チェックしたい文を貼り付ければ開く漢字か閉じる漢字かすぐにコメントが入りますし、漢字使用率もわかります。
わたしは文賢を契約していなかったころ、迷ったときに毎回記者ハンドブックを引いていましたが、いまは文賢に助けられています。うっかり漢字の開き忘れも予防できますよ。
\ 漢字の閉じ・開きも瞬時にチェック!/
記者ハンドブックを使う
漢字の閉じ開きに迷ったら、確実に答えがわかるのが記者ハンドブック。
私も校正校閲の仕事をするときは、必ず机に置いています。
共同通信社が発行している辞書のように使う書籍で、初版は1956年。2023年現在、14版がでています。14版の改定では「使い分けに迷う異口同音語を一部ひらがな使用を拡大して整理したとのこと。
校正者が思う開く漢字の傾向
校正の仕事をして2年。電子書籍70冊以上・個人ブログ200記事以上校正をしている私が、2024年現在、ブロガーさん・ライターさんの校正をしていて漢字の開閉について思うことを記します。
漢字を自分勝手に開く
標準的なルールは無視し、自分が決めたルールで漢字を勝手に開いてしまうパターンがあります。通例ですと閉じているような漢字を開いてしまったり、カタカナにしてしまっていることも。
- べんきょう
- おやこ
- トモダチ
- キメテ
読者の脳には通例の閉じる漢字のルールが頭に入っていることが多く、突然ひらがなになっていることで、一瞬「え?」と思い、意味が理解できません。頭で漢字に変換して「ああ、勉強か……」とワンテンポ遅れて理解するのです。
カタカナにするのも同様ですね。キャッチコピーでよく一部カタカナがあるので、真似をしているのかもしれません。しかし、無理なカタカナも読者に「ん?」と思わせるのでリズムを乱すことになるのです。
漢字を閉じすぎる
読書好きの方の中には自分が漢字をよく知っているため「読者も知っているはずだ」と思いこみ、悪気なく漢字を閉じすぎてしまう人がいます。例として、以下のようなものです。
- 宜しく(よろしく)
- 専ら(もっぱら)
- 若しくは(もしくは)
- 然し(しかし)
昭和初期以前に刊行された古い小説の中には漢字使用率が高いものもあります。接続詞などが閉じている作品もあるため、影響を受けているのかな、という印象。
しかし、現在の国語では「閉じる漢字」は主にルールで決まっています。
もちろん閉じる漢字に絶対的ルールはないのですが……
閉じすぎて中国の漢詩のようにならないよう、注意が必要です。
開く漢字一覧表まとめ
とにかく開く漢字の情報が欲しい、といった方むけに開く漢字を一覧表にしました。ライティングにお役立てください。
漢字を閉じた状態 | 漢字を開いた状態 | 例 |
---|---|---|
和える | あえる | ほうれん草をゴマであえる |
或いは | あるいは | |
最早 | もはや | もはや誰にも止められない |
上手い | うまい | 彼は説明がうまい |
頂く | いただく | |
色々 | いろいろ | この3年、いろいろなことがあった |
薄ら | うっすら | うっすら雪化粧をしている |
美味しい | おいしい | |
一昨日 | おととい | おとといから雨が降り続いている |
然し | しかし | 彼は大人だ。しかし、世間を知らずなところがある。 |
且つ | かつ | |
但し | ただし | |
又 | また | |
極めて | きわめて | |
勿論 | もちろん | |
是非 | ぜひ | |
何故 | なぜ |
漢字を開くのか迷ったら読者が読みやすい方を選ぼう
漢字を開く・閉じるにはルールがあります。然し絶対ではないため、改訂で迷うこともあるでしょう。漢字を開くのか閉じるのか迷ったときには「自分がどう表現したいのか」ではなく「読者はどちらが読みやすいのか」を優先して考えて決めましょう。
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